アウトリーチ事業(朝日中学校)  ※2005年以降はこちら

 感受性が豊かで、自己の成長が目覚しい年代の中学生には、あらゆる機会を捉えて積極的にアートを届けてきた。学校側の受け入れ態勢や、教諭の意識の変化はこの数年の間に大きく変化をしている。教諭も生徒も毎年一部が入れ替わっていく中で、どのようにして継続的にアートを体感するような授業の時数を確保していくかというときに、真っ先に求められるのは学校側の理解とホール、アートに対する信頼感を保障していくことではないだろうか。そのためにも生徒たちと真正面から向き合えるアーティストとともに、限られた時間の中で充実したなにかを作り上げていかなければならない。
 平成9年度から学校祭(文化祭)をサンライズホールで開催することになったのは、当時の校長・教頭の英断である。まったく異なる仕組みの学校とホールが一つの舞台を作っていくためには、数限りない試行錯誤を繰り返してきた。すれ違う意識や立場の違いからの勘違い、お互いを知らないことでの憶測などがいつもつきまとった。それが一気に融合して行ったのは平成15年度だろう。
 現在の朝日中学校では年間のカリキュラムを組む際に、春の体育祭、夏のスポーツ大会、修学旅行、秋の学校祭、冬の卒業関係といった大きな行事を有機的に重ね合わせていけるように組んでいる。その上で音楽や総合的な学習の時間、行事時間を有効にアートを取り入れた授業とし、その結果を学校祭という場で発表することに成功している。
 平成17年度からは体育科でダンス、音楽科で声楽、行事時間で演劇のためにアーティストを受け入れ、通年でのワークショップが続けられている。これらに費やされる授業時間は年間に延べで100時間に及ぼうとしているのは驚きである。


 平成 9(1997)年度  明年度の学校祭をサンライズホールで開催することを決定。
 平成10(1998)年度 生徒数46名。
 平成11(1999)年度 生徒数44名。
 平成12(2000)年度 生徒数42名。
 平成13(2001)年度 生徒数37名。学年ごとに開催していた演劇を全校生徒での作品創りに変更。学校祭の開催
             に限って教職員の担任での担当を廃止し、演劇、音楽等に演出担当の教職員を配置する。
             教師向けのワークショップを開催。
 平成14(2002)年度 生徒数29名。次年度の年間カリキュラムを組みなおし、学校祭に向けた通年での取り組みが
             できるように調整することとした。
 平成15(2003)年度 生徒数25名。授業へ演出家を派遣し、次年度の演出担当教諭を演出助手とする。教師向け
             のワークショップを開催。



舞台美術

本番
2003年度
●全校演劇
  上演作品「ナツヤスミ辞典」 成井豊
  演出:斉藤千鶴   演出補:小野豪士(中学校教諭)
  

 学校側とホール側のスタッフ体制を4月に確認した。ホール側では演出家、舞台スタッフをプロでサポートすることとし、必要に応じて学校へアウトリーチすることとした。本番までの大まかなスケジュールは次のとおり。

1月24日 学校祭に関する統括的な協議。(学校内)
3月24日 学校とホールの打ち合わせ。
4月28日 全校演劇打ち合わせ。いくつかの候補作品を全校生
      徒に示し、生徒たちの希望により作品決定。成井豊
      「ナツヤスミ辞典」。著作権者への上演許可を申請。
5月29日 十勝地区高文連演劇ワークショップを視察、参加。
      (教員・ホール職員)。台本のリライト。
6月10日 学校に対してアウトリーチの説明会を開催。
6月24日 台本によらないワークショップ。
6月26日 台本読み合わせ。キャスト、スタッフ決定。
7月7日  稽古開始。大道具製作打ち合わせ。
7月9日  稽古。
7月15日 稽古。参観日公開。
7月22日 稽古。
7月23日 場通し。スタッフ会議。大道具打ち合わせ。終業式。
7月28日 演劇ワークショップ。(ホール事業)。8月2日まで連続
      開催。
8月17日 演劇ワークショップ。(ホール事業)。
8月19日 舞台仮組み。稽古。
8月27日 ホールでの稽古。29日まで連続。
8月31日 舞台仕込み。
9月1日  舞台建て込み。場当たり。稽古。SE製作。大道具仕
      上げ作業。舞台での稽古開始。
9月2日  稽古。CUE及びSE決定。大道具仕上げ。
9月3日  場当たり。小返し稽古。
9月4日  通し稽古。テクニカルリハーサル。
9月5日  ゲネプロ。
9月6日  本番。

 学校の授業への演出家のアウトリーチは始めての試みであり、ホール側と学校側の意識のすり合わせが常時行われたことがその後の活動によい影響を与えた。信頼関係をどのように構築していくかということである。上記のスケジュールと重複するが、これ以外にもいくつかの関連ワークショップなどを開催し、教師が参加した。

ワークショップ「中学生の楽しい演劇作り」(ホール主催)
 夏休み期間中は学校での授業による演劇制作ができないため、ホール主催のワークショップを6日間にわたり開催した。生徒の参加は任意。学校側の協力で、ほとんどの日程に教師が参加した。

ワークショップ「演劇演出に関するワークショップ」(ホール主催)
 別途記載

「貸してください!あなたの力! 大工仕事の得意な方を探しています!」(ホール主催)
 舞台美術に必要なパネル類などの製作のために、地域の力を借りて、授業中に学校で生徒と一緒に作業をしてもらった。3日間の日程で、プロの舞台美術製作者の指導の下で作業が進められた。延べ3日間で12名の大人の参加者があった。

●ダンス
 別途記載

●音楽
 別途記載

演劇ワークシッョプ

舞台建込み

本番

本番

音楽ワークショップ

全校音楽本番


ダンスワークショップ

ダンス本番


2004年度

●全校演劇
  上演作品:「五番目の願い事」 
  演出・リライト:小野 豪士
  アドバイザー:高橋 聡

 昨年の作品づくりに演出補として参加していた小野教諭の初演出作品となった。作品の選定からリライトでは高橋聡氏(札幌市)のアドバイスを受け、演出には斉藤千鶴氏のアドバイスを受けた。劇中ではダンスシーンが重要な場面となるため、伊藤素子氏(札幌市)に振り付けを依頼した。
 今年度からは1週間程度、学校機能をすべてサンライズホールへ移し、生徒が直接ホールへ登校、一日中舞台での稽古や準備を行うようなカリキュラムが実現した。学校側が1年前からの周到な準備を重ねることでできた快挙といってもいい。

3月中旬 候補作品を決定。
4月上旬 上演作品を決定。
4月26日 全体に関するスケジュール確認。
5月下旬 脚本リライト第1稿。
5月29日 脚本リライトに関する打合せ。6月1日まで。
6月18日 脱稿。
6月28日 ダンスワークショップ。講師は伊藤素子氏。キャスト
      決定。
7月20日 斉藤千鶴氏をゲストに招いてキャストによる読み合
      わせ。演出に関するアドバイス。劇中のダンス用の
      曲を選定し、伊藤素子氏に振り付けを依頼。舞台
      セット打ち合わせ。
7月29日 振り付けレッスンをサンライズホールの舞台で。
      30日まで。
夏休み中 生徒の任意参加による稽古。
8月19日 振り付けレッスン。
8月下旬 演出と舞台美術による美術プラン決定。生徒のス
      タッフにより箱馬、人形立の製作。
9月6日 演出、美術、ホールの打ち合わせ。
9月13日 舞台仕込み。美術搬入。
9月14日 斉藤千鶴氏のワークショップ。ホール登校始まる。
9月15日 斉藤千鶴氏のワークショップ。
9月16日 振り付けレッスン。
9月17日 振り付けレッスン。ゲネプロ。
9月18日 本番



●全校音楽

  発表曲:ぞうれっしゃがやってきた  作曲:藤村記一郎   原作:小出隆司  作詞:清水則雄
  招聘アーティスト:小林厚子(藤原歌劇団・ソプラノ)
             瀧田亮子(ピアノ伴奏)
  担当教諭:工藤昌晴(音楽教諭)

 昨年度から学年別の音楽発表から全校生徒による発表へ変わった。今年度は財団法人地域創造の公共ホール音楽活性化事業をうけて、ソプラニストを授業へアウトリーチした。プロのアーティストを授業で受け入れるためには担当教諭が如何に授業としての成立をさせることができるかということも重要な事項である。


4月21日 財団法人地域創造の公共ホール音楽活性化事業登
      録アーティストプレゼンテーションに工藤教諭とホー
      ル職員が参加し、小林厚子氏と面談の上で招聘を
      打診した。
5月25日 アウトリーチ説明会開催。講師に吉本光宏氏(株式
      会社ニッセイ情報研究所)を招き、中学校のほとんど
      の教員が受講した。
5月31日 全体進行に関する打合せ。
6月15日 アーティスト、学校、ホールの関係者打ち合わせ。
6月16日 2校時にわたって音楽ワークショップ開催。PTA、教
      職員の参観あり。ミニコンサートを経て、発声法のワ
      ークショップ。
6月17日 2校時にわたって音楽ワークショップ開催。発声法の
      ワークショップ続き。上演作品についての演出プラン
      について、グループ討議。小林、瀧田両氏がグルー
      プの話し合いに入ってアドバイスを与えた。ミニコン
      サート(小林、工藤両氏の合唱、瀧田氏のピアノ独
      奏)。
      社会人による「ぞうれっしゃ合唱団」を結成。近隣市
      町村のアマチュア合唱団、朝日中学校の教職員に
      呼びかけ、約25名が参加した。本番の舞台でも共演
      することとなる。伴奏者も瀧田氏にピアノを依頼し、
      士別吹奏楽団にホルン、トランペット、フルートを依
      頼した。ソプラノのソロパートは小林氏に出演を依
      頼し、プロのアーティスト、地域の社会人を巻き込
      んだ構成舞台が実現する予定となった。
9月7日 ピアノ伴奏の瀧田氏を招聘し、ほかの伴奏者や「ぞ
      うれっしゃ合唱団」との音合わせを行った。演出プ
      ラン完成。台本決定。SE完成。
9月8日 瀧田氏と中学生との音合わせ。照明スタッフと工藤
      教諭の打ち合わせ。
9月16日 初めて全体での音合わせ。小林、瀧田両氏も参加。
9月17日 ゲネプロ。
9月18日 本番。公共ホール音楽活性化事業のアドバイザー、
      吉本光宏氏(株式会社ニッセイ情報研究所)、財団法
      人地域創造職員参観。


●ダンス
  指導:伊藤素子氏(スタジオセイビ所属・札幌市)
  対象:中学3年生6名及び担任教諭

 ダンス経験のほとんどない生徒を対象にわずか2日間のレッスンで1曲を振付けることになった。状況としては無謀ではあるが、参加した生徒たちの熱意がそれを実現させた。

8月28日 振り付け初日。入念にストレッチを行った後、曲の最
      初から振り付け開始。選択した曲はクリスティーナ・
      ミリアンの「AM to PM」。
8月29日 何とか曲の最後まで辿り着く。練習風景はビデオ収
      録し、時間の隙間をつくってレッスンしていくことにな
      る。
9月18日 本番。担任を含めた7名の稽古の成果を発表。


小林厚子ワークショップ


大森智子ワークショップ





斉藤千鶴ワークシッョプ







本番↓



2005年度

●音楽
  アーティスト 小林厚子(藤原歌劇団・ソプラノ)
           瀧田亮子(ピアノ伴奏)
  担当教諭:工藤昌晴(音楽教諭)

7月7日及び8日 5・6校時
 昨年度に引き続いて小林氏に来校してもらってのワークショップ。2・3年生はすっかり馴染みになっている。それに引っ張られるように1年生も温かい輪の中に入っていくことに抵抗がない。今年度の全校合唱の台本は工藤教諭の手によるものに決定しており、その中で歌われる「翼をください」を使っての発声練習となった。
 途中で氏のミニコンサートをはさみながら、姿勢や呼吸に注意しての発声練習が重ねられていく。最後には小林氏と工藤教諭によるデュエット。

●音楽
  アーティスト 大森智子(藤原歌劇団)
           河本充代(ピアノ伴奏)
  担当教諭:工藤昌晴

11月7日及び8日 5・6校時
 このワークショップでは歌で「表現すること」「伝えること」をテーマとした。あらかじめアーティスト、教諭、ホール職員による連絡と協議を重ねた上で、9月の学校祭で上演された「WINGS〜翼」の部分を使用することが大森氏から提案された。生徒にとっても経験のある構成を使うことでイメージを作りやすいだろうという判断である。
 初日はアーティストと生徒のコミュニケーション作りのために大森氏の話とオペラの独唱、オペラの中の歌についてのレクチャーなどを中心とし、「生きる」(谷川俊太郎)をアレンジしながら自分たちのオリジナルの詩を作っていった。
 2日目は大森氏の独唱から、生徒の自己紹介、ミニコンサートと進めて、自分たちで作った「生きる〜朝日中学校バージョン」を完成させた。「WINGS」の再現ではワンシーンを抽出した上で実際の台本にはないシーンを創り、役を決めて演じ、歌った。最後は大森氏と工藤教諭とのデュエット。





●全校演劇
  上演作品:「学中仕事人」 
  演出:小野 豪士
  作・アドバイザー:高橋 聡

 オリジナル台本による公演。稽古途中で高橋氏のアドバイスを受けた。舞台美術ワークショップ及び斉藤千鶴氏による演劇ワークショップも開催した。
 2学期の開始早々から集中的な稽古が始まった。演出、舞台監督は教諭が、音響、大道具、小道具、衣装は生徒がチーフとなって製作及びオペレートを行った。
 演出(学校教務・学校祭総務)担当教諭は取り組み時期、予算、アウトリーチ、地域への理解、学校祭のおさえについてのリポートの中で、継続的なアーティストのアウトリーチによる生徒たちの変化について述べている。特に「見せる、表現する」能力の成長と、教員がアウトリーチというシステムを「使えるツール」として認識していることは特筆したい。

7月25日  舞台美術製作ワークショップ。
7月26日  舞台美術製作ワークショップ。
8月23日  演劇ワークショップ。講師は斉藤千鶴。
8月24日  演劇ワークショップ。
9月19日  本番






●ダンス
  指導:TAKUICHIRO氏(札幌舞踊会所属・札幌市)
   対象:全校生徒・中学1年生グループ・3年生グループ・教諭グループ
   
 体育科の授業で「表現」のカリキュラムの中でHIP-HOPを使ってみたいとの要望があり、全校生徒を対象とした体験的なワークショップを2回にわたって開催した。

6月30日及び7月11日 5・6校時
 講師:TAKUICHIRO・北岡涼子
 場所:体育館

 2回のワークショップを経て、1年生及び3年生が学校祭におい学年単位で踊りたいとの要望を出してきたため、1年生は北岡氏、3年生はTAKUICHIRO氏に振り付け、指導を依頼した。

1年生ダンスワークショップ
  指導:北岡涼子
 夏休み期間中の3日間連続でのカリキュラム。曲はホリー・バランスの「Kiss Kiss」を生徒が選択した。
7月30日 13:30〜17:00 体育館
7月31日 10:00〜17:00 体育館
8月1日  10:00〜17:00 体育館
 この時点で更に連続した指導が必要となったため、TAKUICHIRO氏にも並行して指導を依頼した。
8月8日 10:00〜  体育館 自主練習
8月9日 10:00〜  体育館 自主練習
8月10日 10:00〜  体育館 自主練習
8月11日 サンライズホール 指導:TAKUICHIRO
8月12日 サンライズホール 指導:TAKUICHIRO
8月13日 自主練習
8月14日 自主練習
8月15日 自主練習
8月16日 自主練習
9月19日 本番

3年生ダンスワークショップ
  指導:TAKUICHIRO
 中学校との協働事業として夏休み期間中にサンライズホールのワークショップとして実施。ワークショップには教諭及びホール職員が張り付くこととした。
8月1日 13:00〜19:30 体育館 指導:TAKUICHIRO
8月2日 10:00〜17:00 体育館 指導:TAKUICHIRO
8月3日 09:00〜13:00 体育館 指導:TAKUICHIRO
8月4日 13:00〜17:00 サンライズホール 自主練習
8月5日 13:00〜17:00 サンライズホール 自主練習
8月10日 13:00〜17:00 サンライズホール 自主練習
8月11日 13:00〜17:00 サンライズホール 自主練習
8月12日 13:00〜17:00 サンライズホール 自主練習
8月13日 10:00〜17:00 サンライズホール 指導:TAKUICHIRO
8月14日 10:00〜15:00 サンライズホール 指導:TAKUICHIRO
9月19日 本番

教師グループ・ダンスワークショップ
  指導:TAKUICHIRO
 生徒たちの練習に付き添っているうちに、教師3名がグループを作ってダンスを稽古した。生徒たちへの指導の終わった夜の時間帯にTAKUICHIRO氏に指導を仰ぐことになり、連日の稽古が続いた。


 体育科の授業から始まったHIP-HOPダンスは、1年生と3年生がそれぞれに学年全体で学校祭での発表を目指して稽古を始め、付き添いの教諭もグループを結成して学校祭でダンスを披露することとなった。
 参加した誰もがHIP-HOPはおろか、ダンス初心者であり、習熟のレベルに合わせた振り付けと稽古が続けられたが、ダンスを中心としたグループ内でのコミュニケーションが活発化したり、札幌のダンスグループとの交流が始まるなど、わずか4時間の授業が発展的に広がっていった。

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